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椎名林檎はなぜ「加爾基 精液 栗ノ花」を作ったか(椎名林檎とレディオヘッド論)

「加爾基 精液 栗ノ花」というアルバムがある。椎名林檎3枚目のアルバムである。

タイトル名の過激さもさることながら発売当時からずっと、椎名林檎のアルバムの中で一番賛否両論が分かれる問題作だ。

このアルバムの世界観に魅了されてファンになる人もいれば、ここでファンをやめる人もいる。

今回は椎名林檎がなんでこんな作品を作ったのかについて語りたい。

加爾基 精液 栗ノ花(カルキ ザーメン クリノハナ)について

無罪モラトリアム→勝訴ストリップ→カバーアルバム(唄ひ手冥利~其ノ壱~)を経てリリースされた椎名林檎3枚目のオリジナルアルバムである。2003年リリース。

無罪モラトリアム、勝訴ストリップで築いた椎名林檎のギターロック的イメージはどこへやら。アルバム全体的に暗くてポップな要素が少なく難解な曲が多い。怖い。

たぶん初めて聴いた人は普通にナニコレ?ってなる。怖い。

「椎名林檎の最高傑作」「日本音楽史上に残る名盤」と言う人もいれば「全然分かんない」「駄作」と言う人もいる。

一見さんお断り。だけど聴けば聴くほど魅力が出てくるスルメのようなアルバムなのだ。

さて突然ですがここでレディオヘッドのあるアルバムの紹介に移ります。

KID A (キッド エー)について

Pablo Honey(パブロ・ハニー)→The Bends(ザ・ベンズ)→OK Computer(OKコンピューター)を経てリリースされたレディオヘッド4枚目のオリジナルアルバムである。2000年リリース。

パブロ・ハニー、ザ・ベンズで築いたレディオヘッドのギターロック的イメージはどこへやら。

アルバム全体的に暗くてポップな要素が少なく難解な曲が多い。怖い。

たぶん初めて聴いた人は普通にナニコレ?ってなる。怖い。

「レディオヘッドの最高傑作」「音楽史上に残る名盤」と言う人もいれば「全然分かんない」「駄作」と言う人もいる。

一見さんお断り。だけど聴けば聴くほど味が出てくるスルメのようなアルバムなのだ。

加爾基 精液 栗ノ花とKID Aの類似性

ここまでの説明で気づいた人もいるかと思いますが加爾基とKID Aって似てない?

  • アルバム全体に漂う暗い雰囲気
  • 音数多い
  • 前作のギターロック的イメージで人気を獲得した後にリリースされた難解なアルバム
  • 賛否両論の評価
  • 聴けば聴くほど味が出てくる
  • 一曲目から死にそうになる
  • 真夜中に一人で聴くの怖くて無理

 箇条書きにするとこんな感じかな。

ちなみにKID Aがリリースされた当時はレディオヘッドの商業的自殺とまで言われた。

KID Aは最後の曲(Motion Picture Soundtrack)で天に昇っていく感覚になるけど、逆に加爾基は最後の曲(葬列)で地獄に突き落とされる感覚になる。

KID Aの日本盤には一時期”夕暮れには切な過ぎる涙を誘い出しているの?”と書かれた椎名林檎のレビュー(メッセージカード)が入っていた。

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茜さす帰路照らされど...!

椎名林檎とレディオヘッド

椎名林檎さんはレディオヘッドを好きであることを公言しており、”私の一番好きな一曲”にレディオヘッドの名曲Creep(クリープ)を挙げていた。

学舎エクスタシーという名の学祭ツアーではクリープのカバーを披露したことも有名だ。

そして2015年にリリースされた「至上の人生」という曲が「クリープだ」と音楽通の間で騒がれた。

後に公開されたMVの椎名林檎のビジュアルもトム・ヨーク(レディオヘッドのボーカル)ぽいので明確にクリープを意識した曲だとわかる。

なぜ椎名林檎は「 加爾基 精液 栗ノ花」を作ったか

 なぜ椎名林檎は3枚目のアルバムで「加爾基 精液 栗ノ花」のような暗くて一般受けしないアルバムを作ったのかという問いについて。

椎名林檎は日本のレディオヘッドになりたかった。和製「KID A」を作りたかった。

のではないだろうか。これ僕ずっと思ってるんです。

世間からも「KID A」と似たような評価をされているし、1枚目、2枚目が絶大に支持されて、3枚目の加爾基があることで椎名林檎の評価(一般の評価というより音楽好きの評価)が不動のものになっていると感じるので、もし「KID A」を狙って作っていたとしたら大成功なんじゃないだろうか。

 おまけ:加爾基はライブで昇華します

椎名林檎のライブで演奏された時に特に「おぉ!」となるのが「加爾基 精液 栗ノ花」の収録曲だ。

あの暗くて難解な曲達がライブ仕様にアレンジされたものを聴けたときの喜びはひとしおだ。

林檎さんも言っていたけど、ライブは魔法をかけてくれる力がある。ライブ中の生演奏が楽しいのはもちろんだけど、ライブから帰って家でCDを聴く時、いつも聴いていた曲たちが驚くほど鮮やかに聴こえるんだ。これもライブの醍醐味だと思う。

加爾基好きだけどライブでの演奏はまだ聴いたことがないという人はぜひ雙六エクスタシーのライブ映像を見ていただきたい。これぞ神セトリと言いたくなる曲目。最高です。

 おまけ2:椎名林檎ファンにおすすめするレディオヘッドの聴き方

椎名林檎ファンだけどレディオヘッドはまだちゃんと聴いたことがないという人。まずは林檎さんもカバーした名曲Creepが収録されているデビューアルバム・パブロ・ハニーからザ・ベンズ→OKコンピューター→キッドAと順を追って聴いてほしい。

椎名林檎ファンならきっと無罪→勝訴→加爾基の感覚で楽しめるはず。ぜひ試してみてください。

そしてOKコンピューターの1曲目(Airbag)が勝訴の1曲目(虚言症)っぽい!!!ってずっと思ってるんだけどだれかとこの気持ちわかちあいたい〜。